毎年この時期になると、受験生だった頃を思い出す。

センター試験は神戸大学で行われた。

何を考えてあんな山の上に大学を建てたのだろう。もしかしたら神戸大学は7万年くらい前から存在していて、当時は平地だった土地が隆起して、いまの六甲山になってしまったのかもしれない。

友達とタクシーを相乗りして山のキャンパスまで行った記憶がある。

最初の科目は英語だった。

英語はとくに好きでもないが苦手な科目でもなかった(試験前の100回音読でだいたい乗り切っていた)ので、まあまあ点は取れるだろうと思っていたのだけれど、試験の雰囲気に飲まれたのか何なのか、しょっぱなからずいぶん苦労して、うんうんうなってマークシートを塗って、どうにかノってきた頃にタイムアップ。「これは失敗だ」ということがわかった。

休憩時間に青い顔をして友達に「どうしよう…」なんて言って、たしなめられていた。どうしようもないのだけれど。

それでも、翌日の国語と世界史でどうにかこうにか挽回して、二次試験に駒を進めることができた。

入試は午後からで、自宅からでも十分行ける距離なのに、父のすすめでわざわざ前日に西神オリエンタルホテルに部屋を取ってもらった。受験生向けのプランだったのかな?父も別室に泊まった。

しかし、それも裏目に出てしまう。

ホテルの部屋に置いてあったパズルに大はまりしてしまったのだ。

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こういうの

前日にも過去問をやろうと思って赤本なんかを持ち込んでいたのだが、パズルがおもしろくておもしろくて、もう一問、もう一問と取り組んでいるうちに結局深夜までかかって全問解いてしまった。ようやく全クリしても、頭が妙に冴えている、目を閉じてもパズルのピースが頭のなかで次々と色々な形を作っていく。

結局、その夜は一睡もできなかった。

翌朝、朝食バイキングで父に会う。

「よく寝れたか?」と聞かれ、「全然寝れなかった…」と答えると、なんだか不機嫌そうになる父。まあ、せっかくホテルまで取ったのに「寝れなかった」では何のために金を出したのかわからない。もちろんパズルをやっていたことなど言えない。

朝食もろくに食べられず、ぼんやりした頭で遅めにチェックアウトして、会場に向かう。父は仕事へと向かった。

大学の生協でお弁当を注文していたのだが、食欲がない。全然食べる気になれない。受験票と一緒に送られてきた引換券は、ジャンパーのポケットの中で紙くずになってしまった。

試験が始まる。英語だけの一発勝負である。

気が張り詰めているのでさすがに眠くはならないが、体がだるい。それでもどうにかこうにか答案を埋めていく。

たしか、自由作文で「バス会社にクレームを入れよ」というお題が出たと思う。僕は中学高校とバス通学をしていた。本数が少なくて遅くて不便なバスにはもういい加減うんざりしていたので、思うさま不満を紙に叩きつけることができた。

試験が終わると、高校の同級生の女の子に出会った。同じ大学を受けていたのである。中学からの同級生で、僕は中学生の頃にその子のことが好きだった。人生で初めての告白もしたのだが、なんだかうやむやになってしまっていた。(振られたのを「うやむやになった」という記憶に書き換えているのだと思う)

僕は、強がったのか、いいところを見せたかったのか、「結構簡単だったね」と言った。

「え、そう?」と彼女。

結局、春になって僕はそこの大学に入学したが、彼女の姿は見えなかった。自分は嫌な奴だったなと、余計なことを言ってしまったことを後悔した。

この時期になるといつも思い出す。

果たしてあの幻のお弁当にはいったいどんなおかずが入っていたのだろうか。

なんだかすごいご馳走が入っていたのではないかと思ってしまうのである。