治療は、自分にとっても心を鎮める時間になっている。

ここでは治療は一対一だ。

いろんな背景を持った人がいる。主婦、文筆家、ファッション関係、金融関係、教師、医師、研究者、エンジニア、デザイナー、建築家、飲食業、写真家、マスメディア関係の方…などなど、本当に幅広い。小中高生や大学生もいる。

いろんな話を聞かせてもらえるのは楽しみでもある。小さな治療院の中にいて、そのすき間から世界を覗かせてもらうことができる。影響を受けて本を読んだり、新しい世界に飛び込んでみることもある。尊敬できる人格の方に「先生」なんて呼ばれながらも、心の中ではその方を師と仰いでいたりもする。

お話が好きな方とはいろいろな話をするが、話しているうちに、多くの患者さんは眠ってしまう。

暖かくして湿度も適度に保ち、静かに音楽を流した部屋でベッドに横たわっていれば、まあ大体の人は眠ってしまう。

治療の前につらいところ、病歴などは聞いているから、あとはカルテのメモを見つつ、頭のなかで組んだその日のプランに従って、治療を進めていく。

筋肉の硬さや、患者さんの刺激への感受性なども考えつつ、施術箇所を決め、黙々と鍼を打ち、灸をし、ローラーをかけていく。

スマホもない、テレビもない、誰に話しかけられることもない(電話が鳴ったりはするけれど)、静かな世界で一人、手を動かしている。そんな環境は、意識しなければなかなか作り出せない。何かを作る職人は、ずっとこんな環境に身を置いているのだろう。そうしていると、ざわざわしている心も洗われるような気持ちがする。施術後はもちろん疲労はあるが、自分も元気になっているのだ。

他者の様子を見て、自身の脳内の同じ部位が活性化する「ミラーニューロン」という神経細胞があるが、患者さんへの施術を間近で見ている治療家は、その恩恵を受けられるのだろう。これについてはまた詳しく調べてみたい。