最近、仕事で船に乗る方の治療をさせて頂いています。

体を触らせて頂いて驚いたのは、耳たぶの付近にある「内耳」の反応の強さでした。

内耳とは、文字通り耳の奥の方にあって、リンパ液に満たされた空間です。

ここのリンパ液が体の傾きによって流れ、前庭器官と呼ばれるセンサーを刺激することで、私たちは体の傾きを感じることができます。

別の症状を訴えて来院された方ですが、これだけ強い反応があれば、めまいや立ちくらみを訴えてもおかしくありません。

長期間船に揺られる生活を長年続けてこられたために、このような状態になったのではないかと推測しました。

話を聞いていると、乗船の訓練では、最初の1カ月くらいはほとんどの人が「ゲロゲロ」になるのだそうです。
いまは特にめまいや立ちくらみなどはないということ。

その後、少しずつ順応し、船の上でも問題なく生活できるということですが、内耳の部分が地上で暮らすよりも圧倒的に大きな負担を強いられることは想像に難くありません。

すぐに、主訴の症状の治療に加えて、耳周囲にも鍼を打ち、ローラー鍼でのケアをお願いしました。

船員さんやパイロット、そして宇宙飛行士、フィギュアスケーターもそうですが、訓練によって平衡感覚を鍛えた方の体は、われわれ一般人とどの点で異なっているのでしょう。

内耳に質的な変化があるのか、それとも脳での処理が異なるのでしょうか。

脳に「平衡感覚野」と呼ばれるものはなく、体のバランスはすべて反射的に修正されています。つまづいたりしたときにいちいち考えていては、大ケガを負ってしまうからです。

果たして、一体どう違うのか、調べてみたいと思いました。
宇宙飛行士にはなかなか会えませんが、今後他の船員さんに会う機会があれば、片端から耳のあたりを触らせてもらおうかと思っています。